PTSDの治療とトラウマケア、EMDR<2022年4月6日のお知らせ>

極限状況や、生きるか死ぬか、という状況にあった場合、それが、後に(少なくとも1ヶ月以上持続し)、その状況の情景が、思い出したくないのに、ありありと想起され(自生記憶想起)又、夢に見て(悪夢)、睡眠が続かず、途中で起きてしまうという症状が出ます。この様な時、強い不安感、恐怖感、嫌な感じ、不快な感じなり、動悸、呼吸数の上昇、息苦しさが出ます。

極限状況や、生きるか死ぬか、という状況とは、(今、ウクライナ情勢で、よくTVで見る事が出来るような)戦争被害、拷問、或いは、交通事故被害、犯罪被害で、生きるか、死ぬか、という状況に遇ったといえます。他に、レイプ被害等が挙げられます。PTSDを非常に広義に解釈すると、家庭内での夫の酷い暴言・暴行を受けてきた妻(DV、モラルハラスメント)、或いは、会社で横暴な上司により、何をやっても、叱責、怒鳴られる、暴言を浴びせかけられる、暴行はないまでも机を蹴られて、恫喝のような叱責をされる部下(パワーハラスメント)等も、本来は、適応障害ですが、状況次第では、PTSDに含められるかもしれません。

適応障害は、ICD-10では、PTSDの隣のコードに適応障害が置かれており、嫌な体験が思い出したくないのに、思い出されてしまう自生記憶想起、と嫌な情景が悪夢となって出て来る、というような形で再体験される連続性があります。

PTSDでは、薬物療法は、SSRIで、PTSDに適応がある物を使います。

特別な精神療法としては、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)とTF-CBT(トラウマに焦点を当てた認知行動療法)がある程度のエビデンスを持っているようで、後者の方が、エビデンスのレベルが高いようです。但し、EMDRについては、近年、WHOがPTSDに対する効果を認めたようです。

自らEMDRについて調べた事のない方ですと、EMDRはイメージしにくいと思われますが、ブラウザで、「EMDR」と検索して頂くと、[EMDR、オフィスK]というのがあり、このサイトでは、海外のものと日本の物の2本、EMDRを行っているYou Tubeが収録されていて、恐らく、他では、You Tubeで、EMDRを見る事が出来ず、貴重な物です。

広義のPTSDと言っても良い患者さんですが、嘗て、クリニックに受診していた方です。鹿児島県の山間部の出身の女性で、19歳でした。小学校の時、クラスに子に虐められ、不登校になりました。しかし、父親が実家のある村の郵便局長で、そうするとその村では名士になる訳で、名士の娘が登校拒否しているのが世間体が悪い、という事になるのでしょうか、父親が仕事から帰宅すると母親と一緒になり、何故学校に行かないんだ、と殴る蹴るをされていていました。この女性は、当院初診時、学校で虐められる情景、自宅で両親に暴行される情景が今でも反復して想起され、悪夢として回帰してきます。当院で、治療を始めたのっですが、これまで、何が良かったでしょうか、と尋ねたら、安心できる相手(大抵は、友達)に話しを聞いて貰って、少しは良かったです、と言われました。体験を共有したのが、患者さんにとり、安心できる友達だったのですが、安心できる他者に体験を共有して貰えたのが、PTSDのフラッシュバックを消失させる力はないものの、患者さんにとっても支えになる、この点がとても印象に残りました。これは、友達による支持的精神療法を受けていた事に相当するのですが、「支えになっている」事が、精神療法的観点から重要な事と思います。

当院では、PTSDのトラウマケアとして、SSRI・漢方を中心とする薬物療法以外に、特殊な精神療法として、EMDRを臨床心理士により、行っています。

EMDRは、1クール8回で、初回90分、2回目以降は60分です。初回は、トラウマ体験をいきなり扱わず、患者さんにとり、安心できる心象や場所をイメージして貰い、EMDRを行います。2回目以降から、トラウマ体験を少しずつ、イメージして貰い、それに対して、EMDRを行います。

極限状況の嫌な体験を思い出したくないのに、思い出してしまう(自生記憶想起)。嫌な情景を悪夢として見てしまう──こういう、いわゆるflash backに、その時の嫌な感情と、不快な身体的感覚が伴って回帰してくるのが、flash bacといわれるもので、その軽減に、EMDRが役に立ちます。